糖尿病と足のつり(こむらがえり)【保健師・看護師執筆】

投稿日:3月 27, 2017 更新日:

足がつる代表的な病気に糖尿病があります。ここでは糖尿病と脚のつり(こむらがえり)との関連について説明していきます。

足のつり「こむらがえり」について

運動中や就寝中に脚がつったという経験のある方は多いかと思います。
脚がつると痛みと痺れがあります。ふくらはぎの筋肉が痙攣して自分の意思ではどうにもならず歩くことも出来ない状態になります。ふくらはぎの筋肉は随意で動かせる筋肉です。つまり自分の意思で動かせる筋肉です。こむらがえりをおこす筋肉は「腓腹筋」です。この「腓腹筋」が異常な収縮を起こすのがこむらがえりなのです。その理由としては大量の下痢、発汗などによる脱水症状や、冷え性からくるような血行障害です。また、「こむらがえり」とはこの「腓腹筋」の異常な痙攣のことをあらわします。腓腹筋の「腓」は「こむら」とよむこともできます。
ではなぜ糖尿病に罹患すると脚がつりやすくなるのでしょうか。一般的には、通常の日常生活を送り、1週間に一度以上の頻度で脚がつ流状態が続いた場合には、何らかの疾患が原因となり脚がつると考えられています。その原因の疾患の一つに糖尿病があげられるのです。

糖尿病について

「糖尿病」という病名を聞くことは多いかと思います。健康診断の結果など、血糖値が高かったから食事に気をつけるようにしよう、と思ったことのある方は多いのではないでしょうか。大きな括りであらわすと、糖尿病とは糖代謝の異常です。
糖質は食餌から摂取するもので、二糖類のショ糖(砂糖の主成分)、多糖類のデンプン、グリコーゲン(米類、パン類、麺類、芋類)があります。
詳細は割愛しますが、これらの糖質が体内に摂取されると様々な消化液によって分解されます。分解された糖質はグルコースという形になり、膵臓から分泌される「インスリン」よって血糖値の調整をされることになります。
人間が生きていくためにはエネルギーが必要です。人間のもつそれぞれの臓器は主としてグルコースをエネルギー源として活用して機能しています。そのため、血液中にはある程度のグルコースの濃度が必要になります。その濃度の調整に大きな役割をはたしているのが「インスリン」なのです。「インスリン」はグルコースの血中濃度を「下げる」役割を果たしています。その逆にグルコースの血中濃度を「上げる」のは「グルカゴン」といいます。
糖尿病と診断するには基準がいくつかあります。良く耳にするのは「空腹時血糖値」ではないでしょうか。空腹時血糖値は朝食を取らずに採取した血液で検査をします。その値が「110mg/dl」であることが正常域とされます。またもう一つ「75g糖負荷試験2時間値」があります。この正常域は「140mg/dl」となります。「空腹時血糖値」と「糖負荷試験2時間値」の両者を満たすものが正常型となります。これらの正常域を超えた数値がでていると糖尿病型と診断されますが、大抵はこれだけですと「糖尿病の疑い」とされます。その後他の検査をして、継続して経過を長い場合では半年ほどみて、数値の上昇や他の身体症状(口渇、多尿、多飲、急激な体重減少など)が現れることはあるかどうかを観察したのち、糖尿病かどうかの診断されます。
糖尿病とはグルコース(糖)の血中濃度が高い状態にあることです。この状態が続くと合併症を引き起こし命に関わる状態となります。その合併症は「網膜症」「腎症」「神経障害」「動脈硬化性病変」があります。そのうち「腎症」「神経症」「網膜症」は三大合併症とも言われています。しかしながら生命の予後に大きく関わるものは動脈硬化性疾患ですので、予防という観点からも動脈硬化性に関する検査をすることは重要視されています。

なぜ糖尿病になるとこむらがえりをしやすくなるのか?

糖尿病とはグルコースの血中濃度を調整できずに、血中の糖の濃度が高い状態が継続していることです。この状態が続いて合併症があらわれるのですが、「神経障害」とは手足のしびれや痛み、感覚の麻痺、下痢や便秘を繰り返す、立ちくらみ、味覚が鈍くなる、発汗障害などその症状は様々です。
ではなぜ神経障害がおこるのでしょうか。その原因はまだはっきりわかっていない部分もあるそうですが、考えられているのは血糖値が高い状態が続くと「ソルビトール」という物質が抹消(心臓から離れた部位、つまり手や足を示します)の神経細胞に蓄積することにより、抹消感覚が鈍くなったり麻痺が起こるとのことです。また同時に高血糖状態が続くと、抹消の毛細血管の血流が悪くなり、神経細胞に必要な酸素や栄養が足りないために神経障害が起こる、という説もありました。
これらの話を考察しますと、こむらがえりと関連しているのは合併症の「神経障害」と考えられます。糖尿病の患者さんの三人に一人はこむらがえりがあるとされています。糖尿病の場合には就寝中に起こることが多いようです。とくに、就寝中のこむらがえりが頻繁でしっかり睡眠が取れなくなり、何かおかしいと感じて病院に受診をして初めて糖尿病に気がついた、というケースも多いそうです。

糖尿病とこむらがえりには繋がりがあります。特に、糖尿病に全く気がつかないときに頻回にこむらがえりがあることで、糖尿病との診断となる方々も多いわけですから、気になる場合には早めの内科受診をお勧めいたします。運動中ではなく、就寝中にこむらがえりが1週間に一度以上継続して現れている場合には特に早めの受診をなさっていただきたいと思います。

執筆者プロフィール

石毛陽子
保健師 看護師 資格有り
看護師経験 :消化器内科外科
保健師経験 :社会福祉施設、保健所(母子保健担当)、病院併設健康管理センターにて産業保健指導担当
ココナラ
にて健康相談、医療健康記事執筆サービス提供。ご依頼はココナラ内から【保健師 YWFH】まで。

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